労務リスクと制度運用

13日を超える連続勤務の禁止は、誰を守るのか ― 2026年10月の労政審・労働条件分科会で始まった、休日の見直しを読む

2026年10月30日の労働政策審議会・労働条件分科会で、「13日を超える連続勤務の規制」と「法定休日の事前の特定」が論点として示されました。まだ何も決まっていませんが、誰を守る見直しなのかは、資料から読み取れます。

この記事では、長い連勤がなぜ起きるのかを整理し、法律を待たずに職場でできることまでまとめます。

残業時間には上限があるのに、連勤の日数には一律の上限がない

4週4休なら、法律を守ったまま48日続けて働かせられる

労働基準法は、休日を毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上与えるよう定めています。後者が「4週4休」と呼ばれる仕組みです。

4週4休では、前の4週の最初に4日休み、次の4週の最後に4日休むと、あいだの48日は休みなしでも制度上は認められます。2019年の働き方改革で残業の時間には罰則付きの上限ができましたが、休日労働も含めて続けて働く日数を一律に制限する規定は、今もありません。

2週間以上の連勤は、ストレス評価で月120時間の残業を上回った

厚生労働省の委託で行われた2020年度のストレス評価の調査では、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」ことのストレスの強さは5.63で、「1か月に120時間以上の時間外労働を行った」(5.53)を上回りました。

2025年度には、2週間以上の連続勤務を主な出来事として心理的な負荷が「強」と判断され、労災の支給が決まった事案が30件あり、そのうち3件は自殺でした。

14日以上の連勤は、宿泊・飲食や建設で全体の約4倍

2024年4〜6月の実績では、最大で14日以上続けて働いた人は、調査の回答者全体で約2%です。ただし業種で大きく差があり、宿泊業・飲食サービス業は8.2%、建設業は7.8%と、全体の約4倍でした。


業種別に、最大14日以上続けて働いた労働者の割合を比べた横棒グラフ
最大14日以上続けて働いた労働者の割合(業種別・2024年4〜6月)(筆者作成・出典:厚生労働省 第214回労働政策審議会労働条件分科会 資料No.1-2をもとに、14日以上の区分を合計)

※画像はクリックで拡大できます

従業員10〜29人の事業所も2.8%と高めです。人員の少ない職場では、代わりの人を確保しにくいことが、連勤を生む要因の一つではないでしょうか。

では、国はこの状態を、どう変えようとしているのでしょうか?

国は、13日の上限と休日の事前の特定を検討している

健康の歯止めと、働き方の選択を両立させたい

議論の出発点は、2026年7月に閣議決定された「骨太の方針2026」です。「心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため」、労働時間法制を労政審で議論するとされました。

そのもとになった研究会の報告書は、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法に設けるべきとしています。週1回、または4週4日という休日の数のルールは残したまま、14日目からは休ませるという上限を足す形です。

休日を前もって決めることが、歯止めを効かせる前提になる

もう一つの論点が、法定休日の事前の特定です。今の法律は、どの日を法定休日にするかを決めることまでは求めていません。そのため法律の上では、法定休日は週ごとに変わりうる状態です。

どの日が休日か決まっていなければ、何日続けて働いたかも数えにくくなります。どの日を法定休日として扱うかは、休日労働(割増35%)か時間外労働(割増25%)かという割増賃金の計算や、残業の上限の管理にも関わります。時間外労働の原則的な上限である「月45時間」には法定休日労働が含まれないため、労政審では、恣意的な休日の振替を防ぐルールも論点になっています。

では、上限を決めたら、長い連勤はなくなるのでしょうか?

連勤の根っこは、代わりがいないこと

例外が求められるのは、代わりがいない場面

報告書は、災害復旧など本当にやむを得ない場合や、顧客や従業員の安全上どうしても必要な場合に代わりの措置を設けて例外とすることも、検討すべきとしています。使用者側は、連続勤務の例外としてシステムトラブルなどの大きな突発事象を挙げ、法定休日の振替の議論でも、子どもの急病などによる急な欠勤で代わりが確保できない場面を挙げています。

挙げられている場面に共通するのは、その日に代わりがいないことです。14日以上の連勤が、人の少ない事業所や、宿泊・飲食のように人手不足の業種に多いことも、この見方と重なります。

例外の幅が決まっても、代わりがいない職場は残る

労働者側は例外を法令で狭く限定するよう求め、使用者側は柔軟さを求めています。ただ、例外を広げれば、代わりがいない職場はそのまま残り、連勤も残ります。例外を狭めれば、代わりを用意できない職場は、営業や受注の見直しを迫られる場合もあります。

中小企業だけの話ではありません。シフト制で働く人を数千人、数万人単位で抱える大企業でも、店舗や現場ごとに「代わりがいない」状態は起きえます。

13日の上限が守るのは、人の少ない職場で、休みを動かされながら働く人です。ただし、本当に守り切れるかは、例外の幅よりも、職場に代わりの仕組みがあるかどうかにかかっています。

では、代わりの仕組みは、どう作ればいいのでしょうか?

代わりの仕組みは、4つの手で作れる

まず、「この人しかできない」仕事を見つける

最初にするのは、誰が休むと回らなくなるのかを洗い出すことです。業務ごとに、こなせる人の名前を並べた一覧を作り、1人しかいない業務に印をつけます。

長く続けて働いている人の中には、この人しかできない仕事を抱えている人も少なくないはずです。連勤の日数を勤怠データで見るのと合わせて、ここから手をつけると、どこに代わりが要るのかがはっきりします。

複数の持ち場をこなせる人を、処遇とセットで育てる

宮城県の温泉旅館「奥州秋保温泉 蘭亭」は、コロナ禍で長く勤めたパートが大量に辞めたことをきっかけに、フロント・客室の準備・清掃・接客・調理・予約管理など、部署をまたいで複数の業務をこなせる人を育てる方針に変えました。

パートの等級は、こなせる業務の範囲に加えて、急な対応や土日・繁忙期の勤務、新人の指導ができるかなどで分け、時給にも反映しています。その結果、部署を越えて人を配置できるようになり、急な欠勤に対応しやすくなり、有休の取得促進にもつながったとされています。繁忙期の売上は10%増え、総時間外労働も減ったと報告されています。

覚える仕事が増える分を処遇で報いているところが、続けられる理由の一つだと考えられます。周りを支える行動をどう認めるかは、承認は何のためにするのかでも整理しています。

店舗や現場をまたいで、応援に入れるようにしておく

1つの店舗や現場の中だけで代わりを探すと、人の少ない職場ほど行き詰まります。

ドン・キホーテなどを運営するPPIHは、特定の店舗に固定せず、店舗が出した応援依頼に応募して働くパート・アルバイトをあらかじめ登録しておく仕組みを広げています。シフト管理システムを提供する会社の発表によれば、応援先の多くを占めるレジ業務について、事前に基礎研修と店舗ごとのルールの共有を行い、本人が店舗と時間帯を選べる方式に変えてからは、応援依頼の充足率が7割を超えて安定したとされています。

社外のスポットワークを使う方法もあります。ただし、初めて来た人でも手順書を見れば入れるところまで仕事を切り出し、標準化しておくことが前提です。厚生労働省は2025年7月、面接などを経ずに先着順で決まるスポットワークの求人では、特段の合意がない限り、応募した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられることや、会社の都合で休ませる場合の休業手当などの留意点をまとめています。

仕事の量と時間の山を変える

人を増やせないなら、仕事のほうを変える方法もあります。ロイヤルホストは2018年までに北海道の全店で24時間営業をやめ、限られた人手を昼と夜のピークに集中させたと報じられています。

建設業では、国土交通省の中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」で、週休2日の確保や天候などを考慮して工期を設定するよう示されています。無理のない工期や営業時間を前提にすることが、現場の連勤を減らす土台になります。

筆者の考え:週の休みは会社が前もって決め、長い休みは本人が選べる

休みには2種類あると考えています。毎週の休日は、会社がシフトで決めるもの。旅行のような長い休みは、年次有給休暇で、働く人が自分で日を選ぶものです。

毎週の休日を何日前までに決めるかは、まだ議論の途中です。米国の外食・小売の時給労働者を調べた研究(Schneider・Harknett、2019年)では、シフトを1週間前より遅く知らされた人は、2週間以上前に知らされた人より心理的な苦痛が強いという結果でした。ただし、この研究が「2週間前なら健康への影響がない」という安全な基準を示したわけではありません。家族の予定を立てることまで考えれば、少なくとも1か月前には休日が決まっていてほしいと思います。

長い休みは、さらに早さが要ります。人気の宿や航空券、新幹線は、数か月前には埋まってしまうからです。働く人には休む日を指定する権利があり、会社が変えられるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。それでも、人の少ない職場ほど、早めに申し出ることをためらうのではないでしょうか。

週の休みを前もって決めることも、長い休みを本人が選べることも、代わりがいる職場でこそ成り立ちます。法律の議論を待たずに、「この人しかできない仕事」を一つ減らすところから始めてみてはいかがでしょうか。

1日の終わりの休息の議論は、勤務間インターバル、「11時間は無理」にどう応えるかと「つながらない権利」は法律になるのかで整理しています。勤怠システムやAIでシフトを組む会社が、規程と仕組みの面で何から備えればいいのかは、休日の見直しに、会社は何から備えるかにまとめました。

【セルフチェック】連勤を減らすための5項目

この記事の考え方を、自社の職場に当てはめてみるためのチェックリストです。正解を出すためのものではなく、立ち止まって考えるためのもの。気になった項目だけ拾ってもかまいません。各項目に、考えるときの手がかりを一言ずつ添えました。

  • 就業規則やシフト表で、法定休日を決めているか週休2日なら土日のどちらか、シフト制なら各週のどの日か
  • 直近の数か月で、14日以上続けて働いた人がいるか把握しているか宿泊・飲食や建設では全体の約4倍
  • 「この人しかできない仕事」がどこにあるか分かっているか長く連勤している人の仕事から見てみる
  • 複数の持ち場をこなせることを、等級や時給に反映しているか覚える負担に報いているか
  • 年休を早めに申し出やすい職場になっているか人の少ない職場ほど言い出しにくい

 

用語メモ

本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。

▶ 法定休日

労働基準法35条で与えることが義務づけられている休日。少なくとも週1回(または4週4回)。曜日は法律で決まっておらず、どの日を法定休日とするかを特定する義務も、今の法律にはありません。週休2日の会社では、2日のうち1日が法定休日、もう1日は法定外休日になります。

▶ 変形週休制(4週4休)

毎週1日ではなく、4週間を通じて4日以上の休日を与える仕組み。労働基準法35条2項で認められています。休日をどこに置くかによって、制度上は長い連続勤務が生じます。

▶ 時季指定権と時季変更権

年次有給休暇について、働く人が休む日を指定できる権利が時季指定権。指定された日に休まれると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社が別の日に変えられる権利が時季変更権です(労働基準法39条5項。呼び名は解釈上のもの)。

 

出典・参考情報










 

※本記事は、2026年11月4日時点で公開されている労働政策審議会の資料、関係団体の報告、公開された企業事例や研究をもとに整理したものです。法定休日の特定と連続勤務の規制は検討段階であり、内容や時期は決まっていません。自社の規程の見直しにあたっては、最新の情報を確認のうえ、専門家にご相談ください。

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