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社外取締役とは何か ―「社外」と「独立」、監査役との違いを、法律と東証のルールで整理する

社外取締役と監査役は、何が違うのでしょうか。「社外取締役」と「独立社外取締役」は、同じものなのでしょうか。

社外取締役を目指して学び始めると、似た言葉が次々に出てきます。よく使う言葉ほど、意味があいまいなまま使われがちです。この記事では、会社法と東京証券取引所(東証)のルールに戻って、まず言葉を正しく分けます。社外取締役を目指す方にも、社外取締役と向き合う執行側の方にも、出発点になる1本です。

社外取締役は、会社の外の目を持つ取締役

社外取締役は、会社の業務を執行せず、経営陣から距離のある立場で、取締役会の一員として議決に加わる取締役です。監査役が「法令や定款に沿って行われているか」を確かめるのに対して、社外取締役は取締役会の議決を通じて、会社として何をするか、経営を誰に任せるかを決めることに関わります。

ここでは、よく使われるのに混同しやすい「社外」と「独立」を、法律と東証の規則に戻って分けておきます。

会社法の「社外」は、経営陣からの距離

会社法は、社外取締役の条件を定めています(2条15号)。大きく分けると、次の3つです。

  • 業務執行からの距離:その会社や子会社で、業務を執行する取締役や従業員などでなく、就任前の10年間もそうでなかったこと
  • 支配する会社からの距離:親会社(親会社にあたる個人を含む)の取締役や従業員などでなく、兄弟会社(親会社の別の子会社)で業務を執行する立場でもないこと
  • 経営者の身内でないこと:その会社の取締役や重要な従業員などの、配偶者や2親等以内の親族でないこと

なお、就任前の10年間に、その会社や子会社で業務を執行しない取締役や監査役などを務めていた人は、さらにその就任の前10年間についても、業務を執行していなかったかが確かめられます。

どれも、経営陣の指揮命令や身内の関係から離れているかを見ています。一方で、取引先との関係や、顧問料のようなお金の関係は、会社法の条件には入っていません。

上場会社には、置くことが義務になった

2019年の会社法改正で、公開会社かつ大会社である監査役会設置会社のうち、有価証券報告書を出さなければならない会社(上場会社の多くが当たります)には、社外取締役を置くことが義務になりました(2021年3月施行)。それまでは、置かない場合に、置くことが相当でない理由を株主総会や事業報告などで説明する仕組みでした。

東証の「独立」は、お金の関係からの距離まで見る

よく似た言葉に「独立社外取締役」があります。これは会社法ではなく、東証の規則から来る言葉です。東証は上場会社に、一般の株主と利益がぶつかるおそれのない社外取締役や社外監査役を「独立役員」として1名以上確保するよう求めています(有価証券上場規程436条の2)。そのうえで、利益がぶつかるおそれがあると判断する例として、次のような人を挙げています。

  • 会社の主要な取引先や、会社を主要な取引先とする会社の、業務執行者
  • 会社から、役員報酬以外に多額のお金を受け取っているコンサルタント・会計専門家・法律専門家
  • 会社の主要株主(大株主)や、その業務執行者
  • 就任前の10年以内に、親会社や兄弟会社の業務執行者などだった人
  • 最近までこれらに当たっていた人や、こうした人の近親者 など

つまり、会社法の「社外」が経営陣からの距離を見ているのに対して、東証の「独立」は、取引や報酬といったお金の関係からの距離まで見ています。大きな取引先の出身者や顧問弁護士は、会社法では社外取締役になれても、独立役員とは言えない場合があります。主要株主との関係などは2026年7月の改正で加わったもので、各社には経過措置を経て順次適用されます。また、「主要な」「多額の」の線引きを東証は数字で示しておらず、コーポレートガバナンス・コードは、各社が独自の独立性の判断基準を定めて開示するよう求めています。

整理すると、「社外取締役」は法律(会社法)で定められた言葉、「独立役員」は法律ではなく、上場会社が守る東証のルールで定められた仕組みです。コーポレートガバナンス・コードが求める「独立社外取締役」も、この東証の考え方に立っています。

では、社内の取締役や監査役とは、何が違うのでしょうか。

社内の取締役・監査役と、何が違うのか

社内の取締役・社外取締役・監査役の違い。業務の執行、取締役会での議決権、主な役割、任期を比べた表
社内の取締役・社外取締役・監査役の違い(会社法をもとに筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

分かれ目は、「決める側」にいるかどうか

取締役会は、会社として何をするかを決める場です。会社の業務の執行を決め、取締役の仕事を監督し、代表取締役を選定し、必要なら解職します(会社法362条)。この「決める側」にいるかどうかが、3者の大きな分かれ目です。

社内の取締役(業務を執行する取締役)は、事業を動かす側でありながら、取締役会では議決権を持ち、自分たちの執行についても決議に加わります。議案の多くは執行側が準備します。社長の部下でもある社内の取締役は、経営陣との関係や社内の立場によっては、反対の意見を述べにくいこともあるでしょう。

社外取締役は、業務を執行せず、経営陣の指揮命令も受けません。そのうえで議決権を持つため、執行とは別の立場から賛否を示せます。経営陣を誰にするか、続けて任せるかの決議にも加わります。その問いは、採決の場面だけでなく、その前の審議で議案を見直させるところにも表れます。

監査は、取締役の仕事が正しく行われているかを確かめる

監査役の仕事は「監査」です。監査とは、取締役の仕事の執行を確かめることです(381条)。法令や定款に沿っているかを中心に、会計や業務の状況も確認します。監査役は、取締役や従業員に報告を求めたり、会社の業務や財産を調べたりできます。不正や法令違反、著しく不当な事実を見つければ取締役会に報告し、取締役の違法な行為で会社に著しい損害が出るおそれがあるときは、その行為をやめるよう求めること(差止め)もできます。

ただし、監査役は取締役会の一員ではないため、議決権はありません。会社として何をするか、誰を代表取締役にするかを決める側には入らず、決まったことやその実行を確かめる立場です。

監査役は、監査する相手である取締役から独立していなければ務まりません。そのため会社法は、監査役の立場を守る仕組みを重ねています。監査役を選ぶのは株主総会ですが、取締役が監査役の選任議案を出すには、監査役(監査役会)の同意が必要です。任期は4年で、取締役のように定款で短くすることはできません(上場会社など)。解任には株主総会の特別決議が必要で、原則として、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります。監査役は、選任・解任・辞任について、株主総会で意見を述べることもできます。解任ができないわけではありませんが、経営陣の都合で簡単に外せないようになっています。

筆者の考え:言葉を分けると、問える立場が見えてくる

学び始めのころ、社外取締役と監査役の違いを、うまく説明できませんでした。どちらも「外から会社を見る人」に見えたからです。「社外」と「独立」も、なんとなく同じ意味だと思っていました。よく使う言葉ほど、規定や法律に戻って確かめることが大切だと感じています。

整理してみると、分かれ目は「決める側」にいるかどうかでした。監査役は、取締役の仕事が正しく行われているかを確かめ、必要なら止めます。社外取締役は、経営陣の指揮命令を受けない一票を持って、会社として何をするか、経営を誰に任せるかを決める側に加わります。だからこそ、「その判断で、会社は中長期に伸びるのか」を問うことができ、問う責任もあります。

執行側の方にとっても、社外取締役が何を問える立場なのかを知ることは、取締役会の準備の出発点になると思います。以前の記事(取締役会は、人への投資をどう問うか)でも書いたように、取締役会で何を問われるかを先に知っていれば、計画の段階で答えを用意できます。社外取締役について学ぶとき、参考にしてもらえる場面があれば幸いです。

【セルフチェック】社外取締役について、言葉で確かめる5項目

社外取締役を目指す方は関心のある会社について、執行側の方は自社について、確かめてみてください。答えの多くは、各社のコーポレート・ガバナンス報告書や株主総会の招集通知に載っています。

  • 社外取締役が、会社法の「社外」に当たる理由を言える業務執行・親会社・身内からの距離
  • 社外取締役のうち、何人が独立役員かを知っている独立役員届出書
  • 会社独自の独立性の基準が、開示されているかを知っている「主要な」「多額の」の線引き
  • 会社の監査を、誰が担っているかを言える監査役・監査等委員・監査委員
  • 社外取締役に期待する役割を、会社として言葉にしている招集通知にある、選任の理由

 

用語メモ

本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。

▶ 業務執行取締役

会社の業務を実際に行う取締役のことです。代表取締役や、担当する部門を持つ取締役などが当たります。社外取締役の条件の一つは、その会社や子会社の業務執行取締役でないことです。

▶ 独立役員

一般の株主と利益がぶつかるおそれのない社外取締役や社外監査役のことです。会社法ではなく東証のルールで定められ、上場会社は1名以上の確保を求められています。

▶ 監査

取締役の仕事が、法令や定款に沿って行われているかを確かめることです。監査役会設置会社では監査役、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会が担います。

 

出典



 

※本記事は、2026年11月時点の法令・規則・公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。具体的な機関設計や役員の選任については、専門家にご相談ください。

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