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AI時代、企業は「AIを使える人」の先に何を求めているのか ― 採用に関わる管理職・人事648人の調査を読む

「AIを使えます」は、これからの転職や社内でのキャリアで、どこまで武器になるのでしょうか。採用に関わる管理職・人事648人の調査から、採用する側が今後重視したい能力を読み、これからのキャリアの築き方を考えます。

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「AIを使う力」は、今後さらに重視したい能力で4番手だった

採用に関わる管理職と人事、648人が答えた調査です

取り上げるのは、アクシスコンサルティングが2026年10月16日に公表した「AI時代の企業が求める人材像に関する実態調査」です。回答したのは、全国の課長級以上で、採用計画や採用要件の策定、選考・面接、採用の最終決定などに関わる648人です(調査期間は2026年9月18〜19日、インターネット調査)。

現在は33.3%で1位、「今後さらに」では17.7%

調査では、重視する能力を「現在」と「今後さらに」に分けて、それぞれ最大3つまで選んでもらっています。

現在重視している能力の1位は「AIの実務活用力」で、648人のうち33.3%が選びました。ところが、今後さらに重視したい能力として選ばれた割合では17.7%で、4番手でした。上位に並んだのは、「AI×創造性」21.9%、「AI×課題設定・課題解決力」21.1%、「AI×専門知識・専門性」18.8%でした。

現在重視している能力と今後さらに重視したい能力の比較
図1 現在重視している能力と、今後さらに重視したい能力(アクシスコンサルティング株式会社調べをもとに筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

割合が増えたのは、創造性などとの組み合わせ

現在より今後の方が選ばれた割合が高いのは、AIと別の力を組み合わせた項目です。「AI×創造性」は10.5%から21.9%へ倍増し、「AI×意思決定力」は10.5%から14.7%、「AI×新規事業・企画経験」は7.6%から12.8%に増えました。

AIを使う力が要らなくなったわけではありません。AIを使う力に加えて、それを何に生かすかへの関心が高まっていると読めます。

では、企業は「AIを活用できる人」を、どのくらいの水準で見ているのでしょうか。

「AIを活用できる人」の基準で最も多いのは、成果を出せること

「成果」と「日常での継続活用」で回答の過半を占める

「AIを活用できる人材」と判断する水準として最も近いものを聞いた設問では、「AIを活用して成果を出せる」が30.7%で最も多く、「日常業務で継続的に活用できる」26.2%が続きました。「基本的なツール利用ができる」を基準にする回答は10.0%で、1割ほどです。

一方、「業務改善・仕組み化ができる」は9.6%、「組織・事業の変革を推進できる」は2.6%でした。

5人に1人は、まだ基準を定義していない

「定義していない」は20.7%で、回答者の5人に1人は、まだ基準を定義していません。

それでも約7割が、採用時にAI経験を確かめている

それでも、採用選考で候補者のAI活用経験やスキルを確かめている回答は、合わせて68.3%ありました(「職種によって確認」33.3%、「必要に応じて確認」18.2%、「必ず確認」16.8%)。「確認していない」は28.5%です。

別々の設問なので、同じ企業で両方が起きているとは限りません。それでも全体で見ると、確認の広がりに比べて、判断する基準の整備にはばらつきがあるようです。

では、どんな企業が、AIと別の力の組み合わせを重視しているのでしょうか。

AI活用を全社で推進する企業ほど、組み合わせを重視していた

全社推進の企業では「AI×創造性」が31.2%

勤務先のAI活用状況と、今後重視したい能力を掛け合わせた集計があります。全社でAI活用を推進している企業の回答者では、「AI×創造性」31.2%、「AI×課題設定・課題解決力」29.3%、「AI×専門知識・専門性」28.8%でした。

個人での利用は認めているものの、会社として推進するには至っていない企業の回答者では、それぞれ11.5%、14.7%、14.7%です。全社推進の企業では、組み合わせの能力を挙げる割合が約2〜2.7倍になっています(全社推進208人、個人利用の段階156人の回答)。

AI活用状況別に見た今後さらに重視したい能力
図2 AI活用状況別に見た、今後さらに重視したい能力(アクシスコンサルティング株式会社調べをもとに筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

全社で使う企業ほど、「何に使うか」に関心が向く

なかでも「AI×専門知識・専門性」は、一部の部署で推進する企業では16.9%と、個人利用の段階とあまり変わらず、全社推進では28.8%でした。全社推進の企業では「AIの実務活用力」も25.0%と高く、使う力そのものも引き続き重視されています。因果関係までは分かりませんが、AI活用が全社に広がっている企業ほど、使う力に加えて、何にAIを使うか、出てきた結果をどう判断するかにも関心が向いている可能性があります。

では、なぜ専門性や課題設定の力が、AIを使い込むほど効いてくるのでしょうか。

専門性は「何を解くか」と「結果が正しいか」を決める

採用に関わる管理職・人事の回答から読み取れるのは、AIを使う力に加えて、その先で「何を解くかを決める力」と「AIの結果を専門知識で判断し、成果までつなげる力」を重視しようとしている姿です。問われるのは、AIを使ったかどうかではなく、自分の領域でAIを使って何を変えたかです。

AIは、解くべき課題までは決めてくれない

AIは、渡された問いには素早く答えます。けれども、そもそも何を解くべきかは教えてくれません。売上が伸びない原因を探るのか、離職を減らすのか、申請の手戻りをなくすのか。問いの立て方は、業務と事業をどれだけ理解しているかで決まり、指示文の書き方よりも、その問いの質が結果を左右します。

AIの答えの良し悪しは、業務知識がないと見抜けない

AIの答えがもっともらしく見えても、正しいとは限りません。たとえば労務の論点なら、法令や通達と照らし合わせられる人が確かめて初めて、使える成果物になります。AIで作業が速くなるほど、結果を確かめる専門知識の重みは増していきます。

成果は「使った」ではなく「何が変わったか」で示す

以前の記事(AI経営は何を測るべきか)でも触れたように、AIの成果は「使われた」「変わった」「価値が出た」の3段で見ることができます。この物差しは、個人のキャリアにもそのまま使えます。調査で最も多かった「成果を出せる」という基準も、使ったかどうかではなく、仕事にどんな変化や価値を生んだかを見る点で、この考え方とつながります。

では、AIと専門性を掛け合わせる力は、どう身につけていけばよいのでしょうか。

筆者の考え:専門性を軸にして、AIは後から足せばよい

AI技術者にならなくても、技術者の話は分かりたい

私はSEとしてシステム開発に携わったあと、人事や組織の仕事に移ってきました。AIのモデルを作る技術者になろうと考えたことはなく、その必要もないと思っています。

ただ、AI技術者が「何ができると言っているのか」「どこで困っているのか」「どこから先は難しいのか」を聞き分ける力は、組織や業務を変える側にも必要だと感じています。

「変革を推進できる」の2.6%は、これから増える

「組織・事業の変革を推進できる」が2.6%だったのは、足元の関心がまず業務の効率化に向かうためで、自然なことだと思います。

実は、重視する能力の設問にも「AI×変革推進経験」という項目があります。現在は3.1%ですが、今後さらに重視したい能力では8.3%で、倍率で見ると約2.7倍と、すべての項目で最も大きく伸びていました。

AIで現場の仕事が変われば、人の働き方が変わり、役割や評価の仕組みも変わっていきます。AIの導入を組織と人事の変更までつなげる仕事は、業種を問わずどの企業にも必要になるはずです。この数字は、これから大きく増えていくのではないかと見ています。

企業も、専門性を見てAIは後から育て始めている

専門性とAIの両方を高い水準で持つ人は、今はまだとても少数です。個人的な実感ですが、企業の方と話す中で、採用では専門性を重視し、AIは入社後に育てるという考え方の会社も出てきているように感じます。希少な人を奪い合うより、専門性のある人にAIという道具を渡す方が、企業にとっても確実だからです。以前の記事(ライオンはなぜ「AIを使える人」で終わらせなかったのか)で取り上げた、研究員が自分の業務から課題を見つけ、データやAIで解く力を身につける育成も、その一つの形です。

働く側は、自分の領域で「変わったこと」を積み上げる

働く側にとっては、積み上げてきた専門性がそのまま生き、AIという道具が後から加わるのはうれしいことです。AIを一から極めようとするより、まず自分の専門領域でAIを使い、仕事の何が変わったかを小さくても一つずつ言葉にしていく方が、近道になるのではないでしょうか。

採用や育成を担当している方なら、もし求人票の「生成AI経験」の書き方を見直す機会があれば、職種ごとに「入社後にAIで何を実現してほしいか」を書いてみてはいかがでしょうか。この記事を参考にしてもらえる場面があれば幸いです。

【セルフチェック】AI時代のキャリアを考える5項目

この記事の考え方を、自分のキャリアに当てはめてみるためのチェックリストです。正解を出すためのものではなく、立ち止まって考えるためのもの。気になった項目だけ拾ってもかまいません。各項目に、考えるときの手がかりを一言ずつ添えました。

  • 自分の専門領域を一言で言えるか職種名ではなく、自分が解ける課題で言ってみる
  • AIを使って結果が変わった仕事を、1つ説明できるかかかった時間、品質、手戻りなど、数字か事実で
  • AIの答えの誤りに、自分の知識で気づいた経験があるかどの知識が、誤りに気づく手がかりになったか
  • 技術者やベンダーの説明を、自分の言葉で言い直せるか「何ができて、何が難しいか」を分けて言えるか
  • 職務経歴書に「変わったこと」を書いているか使ったツール名より、仕事の何が変わったか

 

用語メモ

本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。

▶ クロス集計

回答者を属性(この記事では勤務先のAI活用状況)で分け、グループごとに回答の割合を比べる集計方法です。グループ間の違いは分かりますが、一方が他方の原因かどうかまでは分かりません。

▶ 課題設定と課題解決

課題設定は「何を解くべきか」を決めること、課題解決は決めた課題に答えを出すことです。AIは後者を速くしますが、前者は業務や事業を理解している人が担います。

 


 

※本記事の数値は、アクシスコンサルティング株式会社調べ(2026年10月16日公表のプレスリリース)にもとづきます。回答者の認識を尋ねた調査であり、実際の採用結果を示すものではありません。キャリアや採用の判断は、ご自身や自社の状況に合わせて行ってください。

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