社外取締役は、この10年あまりで大きく増えました。プライム市場では、独立社外取締役が取締役会の3分の1以上を占める会社が98.8%に達しています。なぜ、ここまで増えたのでしょうか。
この記事では、上場会社の形(機関設計)の変化と、社外取締役の報酬の変化から、その流れを整理します。「社外」と「独立」の違いや、社外取締役と監査役の違いは、前回の記事(社外取締役とは何か)にまとめました。
Contents
上場会社の形は、10年あまりで入れ替わった
上場会社の形(機関設計)は、大きく3つあります。
- 監査役会設置会社:監査役会が監査を担う。社外取締役は取締役会で議決に加わる
- 監査等委員会設置会社:監査役の代わりに、取締役でつくる監査等委員会(過半数が社外取締役)が監査を担う
- 指名委員会等設置会社:指名・監査・報酬の3つの委員会(それぞれ過半数が社外取締役)を置き、業務の執行は執行役が担う

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3つのうち監査等委員会設置会社は、比較的新しい形です。2014年の会社法改正でつくられ、2015年5月から選べるようになりました。その直前の2014年7月には、東証の全上場会社の98.3%が監査役会設置会社でした。それが2015年7月には監査等委員会設置会社が4.5%、2020年には30.1%となり、2026年7月には47.6%と、監査役会設置会社(49.7%)とほぼ並んでいます。10年あまりで、上場会社の形が大きく入れ替わったことになります。
プライム市場に限ると、変化はさらに進んでいます。2026年7月の調査では、1,551社のうち、監査等委員会設置会社が50.5%と半数を超え、監査役会設置会社が44.1%、指名委員会等設置会社は5.4%でした。後ろの2つでは、社外取締役が監査の役割も担います。
法律では委員会を求められない会社(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社)でも、任意の指名委員会を置く会社はプライム市場全体の87.2%、任意の報酬委員会は88.8%にのぼります。経営陣を誰にするか、報酬をどう決めるかに、社外取締役が関わる会社が広がっています。
では、なぜここまで会社の形が変わったのでしょうか。
社外取締役を求める流れのなかで、会社の形が変わった
きっかけは2015年
2015年には、二つのことが重なりました。5月に監査等委員会設置会社が選べるようになり、6月にはコーポレートガバナンス・コードの適用が始まって、上場会社は独立社外取締役を2名以上置くことを求められました。コードは、従うか、従わない理由を説明するかを会社が選べるルールで、法律上の義務ではありません。その後、2021年3月には一定の上場会社に社外取締役を置くことが法律で義務になり、同じ年6月のコード改訂では、プライム市場の会社に3分の1以上が求められるようになりました。
移行が選ばれる3つの理由
この流れのなかで、監査等委員会設置会社に移る理由としてよく挙げられるのが、次の3つです。
- 社外取締役をそろえやすい:監査役会設置会社は、社外監査役(監査役の半数以上)に加えて社外取締役も置く必要がある。移行の際に、社外監査役だった人を監査等委員である社外取締役として選び直すことで、社外の役員の数を大きく増やさずに社外取締役の割合を高められる
- 監査を担う人が議決権を持つ:監査等委員は取締役なので、監査に加えて、取締役会で議決に加わる
- 取締役会が監督に集中しやすい:取締役の過半数が社外取締役である場合や、定款で定めた場合には、一部を除いて重要な業務執行の決定を取締役に任せられ、取締役会は監督に時間を使える
監査役をなくすことが、目的ではない
社外取締役を求める流れが強まるなかで、監査等委員会設置会社への移行も進みました。社外取締役をそろえやすいことは、移行を選ぶ理由の一つと考えられます。ただし、移行の目的は会社によって異なり、監査と監督のあり方や、意思決定の仕組みを見直すという面もあります。監査役をなくすこと自体が目的というより、監査の担い手を、議決権のない監査役から、議決権を持つ取締役へ移す動きと見ることができます。一方で、監査役には一人ひとりが単独で権限を使える強み(独任制)があり、それを重視して監査役会設置会社を続ける会社もあります。最近は、周りに合わせて移行する「横並び」の動きもあると指摘されています。
では、こうして社外取締役が増えた今、人数と報酬はどうなっているのでしょうか。
人数はそろい、報酬も上がった
独立社外取締役は、ほぼすべての会社で3分の1以上
東証の2026年7月の調査で、独立社外取締役が取締役会の3分の1以上を占めるプライム市場の会社は98.8%、過半数を占める会社は29.9%(前年から3.7ポイント増)でした。1社あたりの独立社外取締役は平均4.4人です。コーポレートガバナンス・コードが求める「3分の1以上」は、ほぼすべての会社が満たしています。
報酬は上がり、役割は重くなっている

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人数がそろうのと並行して、報酬も上がっています。WTW(ウイリス・タワーズワトソン)の調査では、日本の時価総額上位100社のうち売上高1兆円以上の企業で、社外取締役の総報酬(中央値)は2023年度の1,720万円から、2025年度には1,996万円になりました。直近の1年では、WTWの公表値で11.7%の上昇です。
WTWは、経営幹部の指名や報酬の検討に深く関わる社外取締役が増え、責任の範囲や拘束される時間も広がっていると指摘しています。コーポレートガバナンス・コードも改訂を重ね、株主との対話や後継者計画、報酬について、取締役会と社外取締役の役割を明確にしてきました。一方で日本では、議長や委員長などの重い役割に応じた報酬の設定や、その違いが分かる開示には、なお課題があるとされています。
なお、これは大企業の数字です。デロイト トーマツ コンサルティングと三井住友信託銀行が2026年11月に公表した「役員報酬サーベイ(2026年度版)」では、調査に回答したプライム上場企業の社外取締役の報酬は、中央値で1,000万円(前年比4.2%増)でした。調査の対象や方法が違うので単純には比べられませんが、会社の規模によって水準は大きく違います。いずれにしても、報酬が上がるほど、それに見合う役割を果たしているかが問われます。
では、人数と報酬がそろった今、次に問われるのは何でしょうか。
次に問われるのは、何を問い、何を監督するか
コーポレートガバナンス・コードは、独立社外取締役に期待する役割として、経営の方針への助言、経営陣の選解任など重要な意思決定を通じた監督、会社と経営陣・支配株主などとの利益相反の監督、少数株主などの意見を取締役会に反映することを挙げています。2026年の改訂の内容は、以前の記事(CGコード改訂2026が確定)でも整理しました。
会社法の見直しも進んでいます。法制審議会での議論を受けて法務省が2026年3月にまとめた中間試案では、指名委員会等設置会社の指名委員会の権限などについて、見直しの案が示されました。一方、取締役会の過半数を社外取締役とする義務付けは、今回の具体的な案とは別に、将来の検討課題として触れられています。
人数をそろえる段階は、ほぼ終わりました。これから問われるのは、社外取締役が取締役会で何を問い、何を監督するかという中身です。
筆者の考え:形が整ったあとに、中身が問われる
数字を並べてみると、この10年は、制度が先に動き、会社の形と人がそれを追いかけてきた10年だったように見えます。社外取締役を求める流れのなかで、会社の形が変わり、報酬も上がりました。
ただ、形が整うことと、中身が伴うことは別です。監査役から監査等委員になった人は、議決権を持つ立場として何を問うのか。報酬が上がった社外取締役は、それに見合う問いを立てているのか。人数と報酬がそろった今、問われているのはそこだと思います。
執行側の方にとっても、社外取締役に何を期待するのかを、会社として先に言葉にしておくことが、形を中身に変える一歩になるはずです。社外取締役の役割を考えるとき、参考にしてもらえる場面があれば幸いです。
【セルフチェック】会社の形と社外取締役について確かめる5項目
社外取締役を目指す方は関心のある会社について、執行側の方は自社について、確かめてみてください。答えの多くは、コーポレート・ガバナンス報告書や有価証券報告書に載っています。
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機関設計が、3つのどれかを言える監査役会・監査等委員会・指名委員会等
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機関設計を変えたことがあるなら、その理由を説明できる移行した年の招集通知・定款変更の理由
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独立社外取締役が、取締役会の何分の1かを言えるプライム市場は3分の1以上
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指名・報酬を決める委員会が、法定か任意かを知っている委員の顔ぶれと、社外取締役の数
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社外取締役の報酬の水準をつかんでいる有価証券報告書「役員の報酬等」の総額と人数
用語メモ
本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。
▶ 機関設計
株主総会、取締役会、監査役、委員会など、会社の意思決定や監督の仕組みをどう組み合わせるかのことです。上場会社は、監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社のいずれかを選びます。
▶ 監査等委員
監査等委員会設置会社で、監査を担う取締役のことです。3人以上で、過半数は社外取締役でなければなりません。監査役と違い、取締役会で議決権を持ちます。
▶ 独任制
監査役が、監査役会の中でも一人ひとり単独で調査などの権限を使えることです。監査等委員会や監査委員会は、委員会として組織で監査を行う点が異なります。
出典
※本記事は、2026年11月時点の法令・規則・公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。具体的な機関設計や役員の選任については、専門家にご相談ください。