2026年10月30日の労政審・労働条件分科会で論点として示された、法定休日の事前の特定と、13日を超える連続勤務の規制。シフト制で働く人を多く抱える会社ほど、規程や勤怠システム、シフトの組み方を見直す影響が大きくなりえます。
この記事では、AIでシフトを組む時代に、会社が規程と仕組みの面で何から備えればいいのかを整理します。長い連勤がなぜ起きるのか、職場の「代わり」をどう作るのかは、13日を超える連続勤務の禁止は、誰を守るのかにまとめています。
Contents
休日の見直しは、規程とシステムの見直しになる
決まりそうなことと、まだ決まっていないこと
議論の方向は2つです。どの日を法定休日にするかを前もって決めること。そして、13日を超えて続けて働かせないこと。
一方で、何日前までに休日を決めるか、決めたあとにどこまで動かせるか、連勤の例外をどこまで認めるかは、まだ決まっていません。会社の備えは、この「決まっていない部分」に左右されます。
シフト制の人が多い大企業ほど、影響が大きくなりうる
テーマパークやホテル、外食や小売のチェーン、大手ゼネコン、鉄道や物流、介護、システムの運用・保守。プライム市場の大企業にも、シフト制や不規則な休日で働く人を数千人、数万人単位で抱える会社は少なくありません。
人数が多いほど、1人ずつ法定休日を決め、振替や連勤の日数を管理するために、勤怠システムの改修や設定の見直しを検討する必要が出てきます。本社で規程を決めても、グループ会社や店舗ごとにシフトの組み直し方が違うという課題もあります。
では、法律が決まる前に、会社はどこから手をつければいいのでしょうか?
決まる前に、規程と運用で確かめておく3つ
備えは、法定休日の決め方、振替と代休の区別、シフトを確定する時期の3つを確かめるところから始められます。どれも、今の就業規則とシフトの実態を見れば分かることで、法律がどちらに決まっても、そのまま勤怠システムやAIの設定の土台になります。
法定休日を、どう決めているか
就業規則で、法定休日を決めているかを見てみてください。週休2日の会社では、土日のどちらが法定休日なのかを決めていないことも少なくありません。
法定休日を決めておらず、週の起算日も別に定めていない場合、行政解釈では、日曜から土曜までの1週間に休日を一度も取らずに日曜と土曜の両方に働いたときは、後にくる土曜日の労働が法定休日労働として扱われます。
曜日を一律に固定しにくいシフト制の職場では、たとえば「シフト表で法定休日として指定した日とする」のように、就業規則で決め方のルールを定め、一人ひとりの法定休日はシフト表で週ごとに決める方法が考えられます。
一方、仮に「各週の最後の休日とする」のような決め方をすると、シフトの変更に伴って、法定休日として扱う日も変わる運用になりえます。今後、事前の特定が求められたときに、こうした決め方がどう扱われるかは、まだ決まっていません。
こうした決め方を続けるなら、一つの案として、「シフトを公開したあとに組み直しても、法定休日は動かさない」と社内で決めておく方法が考えられます。法律で求められていることではありませんが、そうする場合、勤怠システムでは、公開した時点の法定休日を固定して残す仕組みが必要になります。シフトの変更履歴と法定休日の判定を別々に管理する必要があるため、システムによっては改修が必要になります。自社がどんな決め方をしているかを、まず確かめておきましょう。
振替と代休を、区別して運用しているか
前もって休日と労働日を入れ替える「振替休日」なら、もとの休日は労働日になり、休日労働の割増はかかりません。ただし、振り替えた結果その週の労働時間が40時間を超えれば、時間外労働の割増が必要です。法定休日に働いたあとで休みを与える「代休」は、休日労働の割増35%が必要です。
代休の日を無給とする一般的な計算では、代休の日の賃金を差し引いても割増の35%分は残ります(賃金の支払い方によって精算は異なります)。振替をいつまでに誰が決めるのか、規程と実際の運用、勤怠システムの扱いがずれていないかを確かめておきましょう。
シフトを、何日前までに確定しているか
今回の議論で最も影響が大きいのが、「何日前までに休日を決めるか」です。法定休日をシフト表で特定する運用なら、シフト表の公開サイクルが重要になります。ただし、シフト表に「休」と書いてあるだけでは、それが法定休日か法定外休日かは分からないため、シフト表の公開と法定休日の特定は、必ずしも同じではありません。
たとえば、毎月20日に翌月1か月分のシフトを出す職場なら、翌月の各週の休日は、およそ10日前から40日前に示されます。毎週金曜に翌週分を出す職場なら、3日前から9日前ほどです。同じ「シフト表で決める」でも、出し方で予定の立てやすさは大きく変わります。

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今、シフトをどのくらいの期間分、何日前に出しているか、出したあとにどのくらい組み直しているかを、店舗や現場ごとに確かめてみてください。
組み直しが多い職場ほど、今後のルールしだいで振替の手続が増え、現場の負担が大きくなります。どこで、どんな理由で組み直しているかが分かれば、ルールが決まったときの影響を前もって見積もれます。
では、そのシフトをAIが組むようになると、このルールはどう効くのでしょうか?
AIでシフトを組む時代に、このルールはどう効くか
条件を守るシフトづくりは、AIで支援しやすい
「13日を超えない」「各週に法定休日を置く」「本人の希望を入れる」。こうした条件を満たすシフトの案を組むことは、AIや数理最適化で支援しやすい仕事です。
シフトを手で組んでいる小さな職場ほど、新しいルールの負担は大きくなります。AIのシフト作成の仕組みが、その負担を吸収する助けになるかもしれません。
直前に組み替えるAIは、予定を立てにくくする
反対に、来店の予測などをもとに直前までシフトを組み替えるAIは、働く人の予定を立てにくくします。
シフトを直前に知らされるほど、働く人の心理的な苦痛が強くなることは、米国の外食・小売の時給労働者を調べた研究(Schneider・Harknett、2019年)でも示されています。予測の精度が上がるほど直前の組み替えが増えるなら、AIは予定の立てにくさを広げることにもなりかねません。
「何日前までに決めるか」は、AIへの歯止めにもなる
「何日前までに決め、そのあとの変更には一定の制約を設ける」というルールを置けば、会社が使うAIがどれだけ賢くても、直前の組み替えには歯止めがかかります。今回の「いつまでに休日を特定するか」という論点は、AIでシフトを組む時代の歯止めとしても意味を持ちます。
では、法律が決まる前に動くと、会社には何が得られるのでしょうか?
先に動くと、会社にも得るものがある
採用と定着、そしてリスクの低減
人手不足の業種では、休みの予定が立つことが、働く場所を選ぶ理由になります。先に触れた米国の研究では、心理的な苦痛や睡眠の質、幸福感について、シフトの不安定さとの関連が時給との関連より強かったと報告されています。
連勤が原因の労災や、休日労働の割増の未払いをめぐる紛争のリスクも下げられます。
改修の前倒しと、説明の材料
勤怠システムやAIのシフト作成に、法定休日の特定や連勤の上限を、改修期限に追われる前に組み込めます。人的資本の開示や取締役会で、働く人の健康をどう守っているかを具体的に示す材料にもなります。
筆者の考え:AIに任せる前に、人が決めるルールがある
法定休日の特定も連勤の上限も、就業規則に一行足すだけでは終わりません。シフト表の作り方、組み直しの手順、勤怠システムの判定、AIのシフト作成の設定まで、ひとつながりで変える必要があります。規程・業務の流れ・システムをどこまで一緒に変えるかの考え方は、人事方針を変えるとき、どこまで変えればいいのかで整理しています。
そして、AIがシフトを組むようになるほど、「何日前までに決め、そのあとは簡単には動かさない」というルールを人が先に決めておく重みは増すのではないでしょうか。AIや数理最適化の仕組みは、与えられた条件の中でよりよいシフトを探します。しかし、どんな条件を置き、何を優先するかは会社が決めることだからです。
まずは、今のシフトを何日前に確定しているかを、数字で出してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
【セルフチェック】休日の見直しに備える5項目
この記事の考え方を、自社の制度に当てはめてみるためのチェックリストです。正解を出すためのものではなく、立ち止まって考えるためのもの。気になった項目だけ拾ってもかまいません。各項目に、考えるときの手がかりを一言ずつ添えました。
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就業規則やシフト表で、法定休日をどう決めているか説明できるか決めていない場合の扱いも確認
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振替と代休を、規程・運用・勤怠システムで区別できているか代休でも割増の35%分は残る
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シフトをどのくらいの期間分、何日前に出し、そのあと何回組み直しているか把握しているか公開サイクルで、法定休日が決まる時期も決まる
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勤怠システムで、法定休日の特定や連勤の上限を設定できるか改修が必要なら、期限に追われる前に
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AIでシフトを組むなら、「何日前までに決めるか」を条件に入れているか直前の組み替えが増えていないか
用語メモ
本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。
▶ 法定休日
労働基準法35条で与えることが義務づけられている休日。少なくとも週1回(または4週4回)。曜日は法律で決まっておらず、どの日を法定休日とするかを特定する義務も、今の法律にはありません。週休2日の会社では、2日のうち1日が法定休日、もう1日は法定外休日になります。
▶ 振替休日と代休
振替休日は、あらかじめ休日と別の労働日を入れ替えること。就業規則に振替の定めがあり、前もって振り替える日を特定することなどが条件とされています。代休は、休日に働いたあとで代わりの休みを与えること。働いた日は休日労働のままで、割増賃金の対象になります。どちらも労働基準法に直接の条文はなく、通達などで整理されています。
出典・参考情報
※本記事は、2026年11月4日時点で公開されている労働政策審議会の資料と海外の研究をもとに整理したものです。法定休日の特定と連続勤務の規制は検討段階であり、内容や時期は決まっていません。自社の規程やシステムの見直しにあたっては、最新の情報を確認のうえ、専門家にご相談ください。