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AIとの壁打ちを積み上げるには ― 半年分の対話ログから分かった、違和感を「次からのルール」に育てる方法

AIを壁打ちの相手にしているのに、毎回同じような直しをしていませんか。この記事では、筆者がブログ制作で半年間AIと交わした対話を振り返り、AIに違和感を示した場面が、その後どう「次からのルール」に育っていったのかを整理します。

AIとの壁打ちは、同じ直しを繰り返していると積み上がらない

同じような指摘を、何度もAIにしていないか

AIに文章や企画のたたき台を出してもらい、それを直していく。この使い方は、もう珍しいものではなくなりました。

ただ、続けていると、同じような直しを何度もしていることに気づきます。前にも直した言い回しがまた出てくる。前にも説明した前提を、また一から説明し直す。一回ごとの対話は便利なのに、手応えが積み上がっていかない。そんな感覚を持っている人は少なくないのではないでしょうか。

筆者は、半年分のAIとの対話ログを振り返ってみた

このブログは、AIと対話しながら作っています。一次情報を調べ、記事の組み立てを考え、下書きを直す。その過程で、AIの案に「何か違う」と感じたときは、その違和感をそのままAIに伝えています。

そこで、2026年4月から9月までのブログ制作の対話を振り返ってみました。見たのは、筆者がAIに違和感を示した場面と、そのあと何が変わったかです。記事制作以外の話題は対象から外しています。

もう一つの材料が、対話の中で決めてきたルールです。「この言葉は使わない」「見出しはこう書く」といった決まりごとを、筆者はAIの側に書き残してきました。その数は、振り返った時点で136項目ありました。

なお、これは筆者一人の記録なので、ここから言えるのは一般論ではなく、仮説です。参考になれば幸いです。

では、振り返ってみると、どんな違和感があったのでしょうか。

違和感には、対象の違う6つの種類があった

拾い出した違和感を並べてみると、何を対象にした違和感なのかによって、6つの種類に分かれました。

AIに示した違和感を、事実・言葉・論理と構成・見せ方・立ち位置と読者・AIとの関わり方の6つに分けた図
図1:違和感の6つの種類(筆者作成)

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事実・言葉・論理への違和感は、その場の直しにつながる

数が一番多かったのは、この3つです。

たとえば、「事実」への違和感は、調査結果からの事実を抽出する際に出てきました。AIが「一般職層は『使い方』でつまずく」とまとめたのを見て、筆者は「一番多い理由は『必要性』だ」と気づきました。調べ直すと、調査元の報告書は、経営層と比較して「使い方でつまずく割合が相対的に高い」と書いていただけでした。

「言葉」への違和感は、「本質」「示唆的」のように、抽象度が高すぎて何を指しているのか分からない言葉に対する指摘が主でした。「論理」への違和感は、「図1と図2がつながっていない」「タイトルの問いに直接答えている段落がない」といった、話の筋への引っかかりです。

どれも、その場で直せば済む種類の違和感です。

図や表の「見せ方」への違和感は、読み手の目線を守る

「見せ方」への違和感も、多くありました。強調のために棒グラフの色を変えたら凡例の色と合っていない、HTMLの表が記事の中で見にくい、などです。

文章の中身は正しくても、「見せ方」がずれると、読み手は迷ってしまいます。「見せ方」への違和感は、読み手の目線を守るために指摘しているものでした。

「立ち位置」への違和感は、記事の方向ごと変える

数は少ないものの、記事への影響が一番大きかったのが、「立ち位置」への違和感です。

ある記事では、AIが既存の理論との違いを整理したうえで、「違う点を突き詰めれば、新しい理論として打ち出せる」という方向を示してきました。筆者はそこに、「読者が求めているのは新しい理論ではなく、現場で使える考え方のはずだ」と違和感を持ちました。その結果、記事全体の組み立てが変わっています(経営層はAIを何に使えばいいのか)。

「AIとの関わり方」への違和感は、協働のしかたを変える

最後の種類は、ほかの5つと性質が違います。「もう少し受け止めてから指摘してほしい」のように、記事ではなく、AIとの関わり方そのものに向いた違和感です。

この違和感は、記事の一文を直すのではなく、AIとの協働のしかたを調整します。人とAIの関係が、違和感を通じて少しずつ作られていく様子が見えた部分でした。

では、こうして直した違和感は、その場限りだったのでしょうか。

違和感は、その場で終わらず「次からのルール」に育ててきた

多くの違和感は、その場の直しで終わらず、「次からのルール」として残っています。違和感をその場で直して終わりにせず、次からのルールとしてAIに引き継げる形で残す。そうすると、同じ直しを繰り返さなくなり、AIとの共同作業が積み上がっていきます。

見出しへの小さな違和感が、半日で基準一式になった

一番分かりやすかったのが、ある記事の見出しをめぐる半日の出来事です。

始まりは、「会社に見えているのは両端だけ」という見出しでした。筆者は「両端という言葉が分かりにくい。パッと見てイメージできない」と感じ、そう伝えました。AIが言い換えを出し、見出しは「『伝えた』と『使った』の間は、ブラックボックスになっている」に変わりました。このとき、「目次だけを読んで話の流れが分かるようにする。パッと見て分からない言葉を見出しに使わない」というルールができました。

ところが、ルールに沿って見出しを平易にしたところ、今度は別の違和感が出てきました。研究を紹介する見出しから理論の名前を外したら、何を根拠にしているのかがぼやけてしまったのです。「実際に研究を使うなら、理論名は目次に入れないとぼんやりする」。ここで、「研究を使う見出しには、領域と理論名を入れる」というルールが加わりました。

さらに、書き直した見出しの中に、「〜という決め方」のような名詞で終わるものが残っていました。「体言止めは分かりにくい。何が何をするのかが分からない」。ここで3つ目のルール、「見出しは主語と述語のそろった文にする」ができました。

見出しへの3つの違和感が連鎖し、それぞれが見出しのルールになった流れを示した図
図2:見出しへの違和感の連鎖(筆者作成)

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一つの違和感を直すと、直した結果にまた次の違和感が出る。それを繰り返すうちに、半日で見出しの基準一式ができあがっていました。違和感を言葉にしたのは筆者で、言い換えの案を出し、理由を整理したのはAIです。そして、決まったことは、その日のうちに「今後の全記事に適用する」ルールとして書き残しています。

残っているルールの約半分は、違和感から生まれていた

この流れは、見出しの件だけではありません。残っているルール136項目を一つずつ見直すと、70項目、約半分が違和感から生まれていました。内訳は、筆者の違和感から生まれたものが60項目、AIの失敗への指摘から生まれたものが10項目です。

残っているルール136項目のうち、違和感から生まれたものが60項目、AIの失敗への指摘から生まれたものが10項目、それ以外が66項目であることを示した図
図3:残っているルール136項目の内訳(筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

残りの66項目は、サイトの設定や制作の手順、よく見る情報源などで、違和感とは関係なく決めたものです。つまり、書き方や見せ方に関するルールに絞ると、そのほとんどが違和感から生まれていたことになります。

AIの失敗も、次からのルールにできる

AIの失敗への指摘から生まれた10項目も、同じように次からの作業を楽にしています。たとえば、AIが記事のHTMLに、ブログのテーマに存在しないデザインの部品を使ったことがありました。このときは、「記事を作るときは、必ず使える部品の一覧を参照する。一覧にない部品は使わない」というルールにしています。

対話が止まったときも同じです。原因は、AIの説明の分かりにくさにあるものが少なくありませんでした。たとえば、「その見出しの下に移します」とAIが説明したとき、何をどこに移すのか伝わらず、聞き返したことがあります。手が止まったら、自分の理解不足だと思い込まず、AIの説明がわかりにくくないかを確かめる。そこで見つかったAIの癖も、次からのルールにできます。

ルールは、AIに引き継げる形で残すと効く

ルールが積み上がっていったのは、決まったことをAIの側に残してきたからです。多くのAIサービスには、会話をまたいで指示や情報を覚えておく機能があります。筆者は、違和感から何かが決まったら、その場で「今後の全記事に適用する」と伝え、ルールとして記録してもらっています。

残すときに気をつけているのは、ルールだけでなく、理由と例も一緒に残すことです。「パッと見て分からない言葉を使わない(例:『両端』)」のように書いておけば、次の会話でAIがルールを読んだときに、何を避けたいのかが伝わりやすくなります。

では、こうして作ったルールは、一度作れば終わりなのでしょうか。

組織学習論の「ダブルループ学習」に似た動きが、一人でも起きていた

振り返ると、ルールそのものも、違和感で書き換わっていました。

たとえば、「本文の見出しは2〜4個に絞る」というルールを作成していましたが、実際に記事を書いてみて「少なすぎる」と感じたので、「3〜6個」に書き換えました。「記事の最後に、筆者コメントを2〜3行置く」というルールも、最後の章で筆者の考えを語る形に変えたため、筆者コメントの役割がなくなり、廃止しています。

組織学習の研究で知られるクリス・アージリスは、1977年の論文で、この違いをサーモスタットにたとえています。暑すぎたり寒すぎたりすると暖房を入れたり切ったりするのが、決められた枠の中で誤りを直す「シングルループ学習」です。一方、そもそも設定温度はこれでよいのか、と前提そのものを問い直すのが「ダブルループ学習」です。

シングルループ学習とダブルループ学習の違いを、サーモスタットのたとえと筆者の記録の例で比べた図
図4:シングルループ学習とダブルループ学習(出典:Argyris(1977)をもとに筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

違和感で文章を直すのは、シングルループです。違和感からルールが生まれ、そのルールにもまた違和感を持って書き換えるのは、ダブルループに近い動きだと思います。アージリスが組織について論じた学び方が、一人の人とAIの間でも、小さく起きているのかもしれません。

そう考えると、この流れは、組織で現場の気づきが方針を変えていく流れとも同じ形をしています。現場で生まれた違和感が、仕組みになり、やがてその仕組みも見直される。AIとの対話は、その小さな練習の場にもなりそうです。

もう一つ、振り返って見えてきたことがあります。半年で残った136項目のルールは、AIが筆者の好みを覚えた記録であると同時に、筆者自身が「自分は何を良いと判断する人なのか」を言葉にしてきた記録でもありました。理由と例まで書き残そうとすると、自分がなぜそれを嫌うのか、何を大事にしているのかを、言葉にせざるを得ないからです。AIを使い込むことは、AIに自分を覚えさせること以上に、自分の判断の基準を言葉にしていくことなのかもしれません。

少なくとも筆者にとっては、違和感をその場で消費せず、次の対話に残すことが、AIとの壁打ちを積み上げる方法になっています。まずは、今日AIに感じた違和感を一つ、メモしてみてはいかがでしょうか。それを次からのルールとして残し、しばらくして合わなくなったら、遠慮なく書き換える。その繰り返しの中で、自分の判断基準が少しずつ見えてくるはずです。

【セルフチェック】AIとの壁打ちが積み上がっているか確かめる6項目

この記事の考え方を、ご自身のAIの使い方に当てはめてみるためのチェックリストです。正解を出すためのものではなく、立ち止まって考えるためのもの。気になった項目だけ拾ってもかまいません。各項目に、考えるときの手がかりを一言ずつ添えました。

  • AIに、同じ直しを何度もしていないか前にも直した言い回しや説明が、また出てきていないか
  • 違和感を、そのままAIに言葉で伝えているか黙って自分で直すだけになっていないか
  • 自分の違和感が、どの対象に出やすいかを知っているか事実・言葉・論理と構成・見せ方・立ち位置と読者・AIとの関わり方
  • 決まったことを、次の会話に引き継げる形で残しているかルールだけでなく、理由と例も一緒に残しているか
  • 手が止まったとき、原因がAIの説明にないかを確かめているか自分の理解不足だと思い込んでいないか
  • 一度作ったルールを、見直したことがあるか合わなくなったルールを、そのままにしていないか

 

用語メモ

本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。

▶ 壁打ち

考えをまとめるために、相手に投げかけて反応を受け取ることです。テニスの壁打ち練習にたとえた言い方で、この記事では、AIを相手に考えを深めていく使い方を指しています。

▶ シングルループ学習

組織学習の研究者クリス・アージリスが示した考え方です。決められた方針や目標の枠の中で、誤りを見つけて直していく学び方を指します。

▶ ダブルループ学習

同じくアージリスが示した考え方で、誤りを直すだけでなく、その前提となっている方針や目標そのものを問い直す学び方です。アージリスは、設定温度そのものを問い直すサーモスタットにたとえています。

 

出典・参考情報

 

※本記事は、筆者一人のAIとの対話の記録をもとにした振り返りです。記事中の分類や数は筆者の判断によるもので、一般的な傾向を示すものではありません。

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