人的資本・ウェルビーイング経営

成果が出ていないメンバーとの面談で、何を話すか ― 「認める」だけで終わらせない、原因の切り分け方

成果が出ていないメンバーとの面談で、まず本人を認めることから入る方は多いのではないでしょうか。それ自体は大切なことです。ただ、認めることが面談の目的になると、成果が出ていないという現実が置き去りになり、次に何をすればよいかが本人の手元に残りません。面談で本当に話すべきことは何かを考えます。

認めることが、面談の目的になりやすい

認めるだけでは、次の行動が見えない

以前の記事(承認は何のためにするのか)で、教室での学習を中心にフィードバックの研究をまとめたレビューを紹介しました(Hattie & Timperley、2007年)。そこでは、人に向けたフィードバック、つまり多くの場合は褒め言葉は、学習の成果につながることが少ないとされています。「あなたは頑張っている」「あなたの責任感は強み」と伝えても、次に何を続け、何を変えればよいかの情報は、ほとんど含まれていないからです。一方で、取り組み方に結びつけた褒め言葉は、より効果があると区別されています。

傷つけたくない気持ちが、基準の話を遠ざける

成果が出ていない人ほど、自信をなくしていることがあります。だからこそ、上司は本人を傷つけないように、まず認めることから入ります。その気持ちは自然なものです。ただ、そのまま基準の話に進めずに面談が終わると、本人は「認められたけれど、何が足りないのかは分からない」状態になります。

自分で改善を回せる人に要るのは、期待の明確さ

成果が出ていないとき、求められている成果は何かを確かめ、今との差をつかみ、自分の行動を変える。この流れを自分で回せる人にとって、「頑張っているね」という言葉はそれほど役に立ちません。それより、何が期待されているかを明確にしてもらう方が、ずっと助かるはずです。

ただ、すべての人が同じように動けるわけではありません。成果の基準があいまいだったり、自分では動かせない制約があったり、何度試してもうまくいかなかったりする人もいます。そういう人に必要なのは、励ましでも、努力不足という評価でもなく、何が障害になっているかを一緒に見極めることだと考えます。

では、成果が出ない原因は、どこにあるのでしょうか。

成果が出ない原因は、本人だけにあるとは限らない

成果は、能力・意欲・機会がそろって出る

ブルンバーグとプリングルは、仕事の成果を、本人の能力(知識や技能に加え、体力なども含む)と意欲(仕事への態度や満足感なども含む)に、機会を加えた3つの組み合わせで考えるモデルを提案しました(1982年)。機会には、作業の条件や道具、材料、上司の行動、仕事の手順などが含まれます。このモデルでは、3つのどれかが欠けると、成果は出にくくなると考えます。

能力も意欲もある人でも、必要な情報が届かない、判断する権限がない、時間が足りない、といった機会の不足があれば、成果は出にくくなります。たとえば、複数の案件を同時に抱え、どれにも十分な時間を割けていない人に「もっと丁寧に」と求めても、状況は変わらないでしょう。

上司が原因をどう見るかで、対応が変わる

グリーンとミッチェルは、部下の成果が低いとき、上司はその原因を本人の能力や努力にあると見るか、仕事の難しさや環境にあると見るかで、対応を変えるというモデルを示しました(1979年)。ただ、実際の職場のデータを使った探索的な研究では、管理職は確かに原因を本人側と外部に分けて見ていたものの、対応はそれだけでは決まらず、部下に対する責任感や組織の制約、今後の成果の見通しなどにも、しばしば左右されていました(Schmidenberg & Cordery、1988年)。

本人の内側だけを見ると、面談は精神論で終わる

原因を本人の内側だけに探すと、面談の結論は「もっと頑張ろう」か「意識を変えよう」になりがちです。機会の側に原因があるなら、本人がどれだけ頑張っても、成果にはつながりにくいはずです。

では、面談で原因をどう切り分ければよいのでしょうか。

原因を一緒に切り分け、基準をそろえる

面談では、認めることを目的にせず、成果が出ない原因を能力・意欲・機会に分けて、本人と一緒に見ることだと考えます。そのうえで、期待する成果と良い取り組みの基準をそろえ、本人の資質をどの場面でどう生かすかまで話す。原因が機会の側にあれば、そこは本人ではなく、上司と組織が手を打つ部分です。

3つに分けて、本人と一緒に原因を見る

面談では、3つの観点ごとに問いを用意しておくと、原因を一緒に見やすくなります(図1)。能力なら「どこでつまずいているか」、意欲なら「この仕事のどこに手応えを感じ、どこで止まっているか」、機会なら「時間や情報、権限、周りの支援は足りているか」です。上司が原因を決めつけるのではなく、本人に話してもらうことが大切です。

入り方としては、まず本人を認めるところから始めてかまいません。ただ、人柄ではなく、最近の仕事の中で良かった具体的な行動を1つ挙げます。そのうえで「一方で、思うように進んでいないところもあると思う。どこで止まっているか、一緒に見てみたい」と続ければ、認めることと原因の話が自然につながります。

成果が出ない原因を、能力・意欲・機会に分けて一緒に見る(面談の問いの例)
成果が出ない原因を、能力・意欲・機会に分けて見る面談の問いの例(Blumberg & Pringle 1982の考え方を参考に筆者作成)

※画像はクリックで拡大できます

期待する成果と、良い取り組みの基準をそろえる

原因が見えてきたら、何をもって成果とするか、どんな取り組みを良いとするかを言葉にしてそろえます。以前の記事で紹介したように、まず本人が自分の取り組みを振り返って話し、上司は基準とのずれを返す。この順番なら、本人が自分で判断する力を育てることにもつながると考えます。

では、本人の資質は、面談でどう扱えばよいのでしょうか。

資質は、どの場面でどう生かすかまで話す

資質は、投資して初めて強みになる

Gallupは、「才能 x 投資 = 強み」という式で強みを説明しています。日本語の公式ページでは、才能を「生来の考え方、感覚、行動」、投資を「訓練、スキル開発、知識構築にかける時間」、強みを「常に完璧に近い成果を出す能力」としています。また、こうした天性の才能を34の「資質」に分けて捉え、才能を見つけるための共通言語としています。資質として表れる才能も、投資を重ねることで、強みとして発揮できるようになります。資質を認めるだけでは、まだ強みにはなっていないということです。

生かせる場面がなければ、資質は成果にならない

資質を生かすには、それを使える場面が要ります。これも機会の一つです。たとえば「あなたの責任感は強み」で止めずに、「その責任感は、関係者の多い調整の場面で特に生きると思う。次の案件では、そこを任せたい」まで話す。資質を、場面と役割に結びつけて伝えるということです。

筆者の考え:承認は、真剣に関わった結果として届く

機会が足りないなら、励ます前に仕事の設計を見直す

面談で機会の不足が見えてきたら、本人を励ます前に、まず仕事の設計を見直すことが先だと考えます。人が担わなくてよい仕事は仕組みに任せ、役割や時間の配分を変える。上司1人で抱えずに、仕組みの見直しにつなげます(以前の記事:人事方針を変えるとき、どこまで変えればいいのか)。

目立たない仕事は、会社として「良い仕事」と定義する

それでも残る仕事の中には、関係者の調整や職場への気配りのように、目立たないけれど組織を支える仕事があります。うまくいって当たり前で、成果が見えにくい仕事です。こうした仕事は、上司個人の気づきに頼らず、会社として「これが良い仕事だ」と言葉で定義し、評価の基準や日々の承認につなげてはいかがでしょうか。コッターも、報酬や人事評価の仕組みが、新しいやり方と自分の利益のどちらかを社員に選ばせてしまうことがあると指摘しています。

仕組みで報いることと、気持ちを伝えることの釣り合い

定義も評価の基準もないまま「いつもありがとう」と伝えるだけでは、受け取る側にはむなしく響くこともあります。それは評価ではなく、「あなたの仕事は私にとって大切だ」という上司個人の気持ちとして伝わるだけだからです。

気持ちを伝えることにも意味はあります。ただ、それは仕事を報いる仕組みの代わりにはなりません。仕組みで報いることと、個人として気持ちを伝えること。この2つの釣り合いがとれるかどうかが、承認が届くか、むなしく響くかの分かれ目だと私は考えています。

釣り合いがとれないまま、やるせない気持ちだけを抱えて働き続けるのは、本人にとっても不毛な日々になってしまいます。だからこそ面談は、気持ちを受け止めるだけで終わらせず、次の一手につなげたいところです。

承認を、マネジメントの目的にしない

「部下は承認を求めている。だから上司は承認してあげよう」という考え方には、上司が与える側、部下が受け取る側という前提があります。そして、成果が出ていない現実があるのに、まず承認することが目的になってしまう。これは順番が逆ではないでしょうか。

上司が障害を見つけ、必要な権限を渡す、仕事の割り振りを変える、評価の基準を明確にする。その行動を通じて、部下は「自分の仕事や状況をちゃんと見てくれている」と感じます。承認は目的ではなく、相手が成果を出せるように真剣に関わった結果として生まれるものだと、私は考えています。

なお、承認を求めることは、自分で仕事ができないことと同じではありません。自分で改善を回せる人でも、自分の貢献がきちんと受け止められているかは気になるものです。承認そのものを否定する必要はありません。承認をマネジメントの目的にしない、ということです。参考にしてもらえる場面があれば幸いです。

【セルフチェック】成果が出ないときの面談の5項目

この記事の考え方を、ご自身の面談に当てはめてみるためのチェックリストです。正解を出すためのものではなく、立ち止まって考えるためのもの。気になった項目だけ拾ってもかまいません。各項目に、考えるときの手がかりを一言ずつ添えました。

  • 本人を認めたあとに、次の行動まで話しているか認めるだけで終わっていないか
  • 成果が出ない原因を、能力・意欲・機会に分けて見ているか本人に話してもらう
  • 機会の不足を、本人の努力の問題にしていないか時間・情報・権限・支援
  • 期待する成果と良い取り組みの基準を、言葉にしてそろえているか本人が先に振り返る
  • 資質を、どの場面でどう生かすかまで話しているか場面と役割に結びつける

 

用語メモ

本記事に登場する専門用語をまとめました。▶ をクリックすると説明が表示されます。

▶ 機会(仕事の成果の要素としての)

本人の能力や意欲とは別に、成果を左右する周りの条件です。ブルンバーグとプリングルは、作業の条件や道具、材料、上司の行動、仕事の手順などを例に挙げています。本記事では、時間や情報、権限なども機会に含めて考えています。

▶ 才能と強み(Gallupの定義)

Gallupの日本語の公式ページでは、才能は「生来の考え方、感覚、行動」、投資は「訓練、スキル開発、知識構築にかける時間」、強みは「常に完璧に近い成果を出す能力」とされ、「才能 x 投資 = 強み」の式で説明されています。

 

Blumberg, M., & Pringle, C. D. (1982) "The Missing Opportunity in Organizational Research: Some Implications for a Theory of Work Performance" Academy of Management Review 7(4), 560–569


Green, S. G., & Mitchell, T. R. (1979) "Attributional Processes of Leaders in Leader-Member Interactions" Organizational Behavior and Human Performance 23(3), 429–458





 

※本記事は2026年10月25日時点で確認できた研究や公開情報をもとに、筆者の考えを加えてまとめたものです。ブルンバーグとプリングルの研究は概念モデル、ハッティとティンパーリーの研究は教室での学習を中心にしたレビュー、コッターの寄稿は観察にもとづく見立てです。図1の問いの例や面談の進め方は、筆者が整理した一例です。面談の内容によっては、労務や健康面の配慮が必要な場合があります。

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